2005/11/28 - MGX氏より寄稿
利用者の大半が問題視するRMTを考えるにあたって、確認しておきたいことがある。あなたが怒っている、不満に思っている対象は、本当にRMT業者に対するものか? ということだ。


まず、インフレとRMTは別問題であることを明確にしておくべきだ。寝釣りなど不正ツール利用の影響でヴァナ・ディール内におけるギルの価値が暴落したことは、インフレに直結する問題である。確かに物価が高騰し、RMTをしなければ理想のアイテムを手に入れられないという強迫観念に縛られ、RMTに走った人もいる。だが、このインフレがなかったとしても、RMTはアイテムを対象としたものとして確実に存在していただろう。あなたがもし、インフレとRMTを同一視して怒りを覚えるなら、それは寝釣りなどの不正ツール使用という規約違反をしていた人々と、それを取り締まれなかった運営側に向けられるべきだ。RMT業者が必ずしも不正ツール使用者ではない。

NMの占有権独占などの理由でRMT業者を嫌うのであれば、それは少しお門違いであろう。怒りや嫉妬の矛先は占有権を獲った人物に向けられるべきであるのだ。NMの半独占はRMTと直結しない。eLeMeNのレポートからも判るように、多くの(日本の)RMT業者は、不要になったギルを、金銭を媒介に仲介するというスタンスである。もし、仮にひとつのNMの占有権をRMT否定派のあなたが恒久的に得たとしても、RMTがなくなることはないだろう。何故なら、あなたはそのNMから得た資金を何らかの形でヴァナ・ディールに還元するはずだからだ。ヴァナ・ディールに戻ったギルは、いつでもRMTに形を変え得る。

中国系RMT業者の存在によってRMTを嫌う人もいるだろう。彼らはNMを独占しようとしてMPKも行なうノーマナー集団だ。だが上記の理由でNMの半独占はRMT活発化の温床になりやすい側面はあれど、RMTと直結しないことが理解していただけただろう。むしろ、それよりも問題なのは、MPKを行なうようなノーマナー集団を放置してしまう運営サイドである。

高価な装備をする人を指し、「どうせRMTをやっているヤツだろ?」なんてあっさりと言い放ってしまう人もいる。それはただの嫉妬だし、筆者的には、言われなき疑いを人にかけるという意味で、ハラスメント行為を行なう危険人物だと思ってしまう。各サーバーに大量のギルがある現在の経済状況に於いて、ヴァナ・ディール内にいくつものギル獲得のビジネスチャンスは転がっている。こんなご時世に高級装備所有者がRMT利用者だなんて論はナンセンスだ。

以上のような点を混同してRMT業者に対し、異様な敵意を持っている人はいないだろうか? これらを除いても、やはり規約違反としてRMTは許されざるものではない、ということであれば、それは正当なる理由でRMT問題を考えているのであろう。ヴァナ・ディール的憂国の士である。

確かにFF11に於いてRMTは違法である。だが、閉鎖された空間内の出来事とはいえ、MMORPGがリアルなビジネスのひとつの形である以上、古物商的な存在であるRMT業者は、たとえ存在を運営側に否定されたとしても、ビジネスとして存在することに対しては異を唱えられるものではないだろう。自社のゲームを使用した古物売買が承服できるものでない、ということなら、そういった存在を許さぬシステムを打ち出すか、徹底した処罰を行なっていくしかない。運営側はそれができる存在なのだから。


冷静に怒りの矛先を整理してみれば、ある種の必要悪であるような気がしてしまうという人は、決して筆者だけではないはずだ。自動車メーカーと中古車ディーラーの関係と同じように、うまく折り合いをつけて共存を目指すのか。あるいは運営サイドのプライドにかけて抑止するのか。個人的には、結果はどちらに転ぶにしても、楽しい仮想空間であれば言うことはない。

文責:MGX(ゲームライター)