2005/11/28 - あしながおじさん氏より寄稿
わたしが「ファイナルファンタジーXI」をプレイし始めたのは「ジラートの幻影」発売直後の2003年5月。2002年5月のサービス開始から1年遅れてのスタートでした。

スタートから半年後、オズトロヤ城で妙な噂を聞きました。「アストラルリング、4500円」。こどもじゃないので、その意味はすぐに解かりました。つまり、ギルを円に換金する方法が存在する。早速、ネットで調べました。当時の取引価格は10万ギル3000円。相場15万ギルのアストラルリングは、なるほど4500円でした。
良い行為、悪い行為ということよりも、4500円という現実のお金をゲーム内でプレイヤーが争っているというサイバーな光景に妙な興奮を感じました。

そしてその思いは良からぬ方向へシフトチェンジしました。
トップになりたいと思うのは、ゲーマーならば誰もが抱く夢です。自分の懐を少し痛めれば、かわいい我がキャラクターが夢に近づける……親バカのような心境で、ギルを買ってみることにしました。

ホームページのメールアドレスに"サーバー名"と"キャラ名""銀行振込時の名前(もちろん偽名)""携帯番号"を書いて送ると、自動返信で振込先の銀行口座番号が送られてきました。指定の口座に振り込むと、1時間後にはモグポストに30万ギルが届けられていました。そのお金でアストラルリングを買ったのは言うまでもありません。

あれから2年が経ち、ギルの価値は驚くほど下がりました。今の相場は当時の30分の1。10万ギル100円にまで下がろうとしています。このままサービス終了までギルの価値は下がる一方でしょう。なぜならサービス終了と同時にギルには1円の価値もなくなるのですから。
定期的にギルを買い足してきて不思議に思うのですが、ギルの価値が下がっているにもかかわらず、1回に支払う額は今も昔も変わっていません。3カ月に1度1万円ほど振り込むことで、人よりちょっと裕福な暮らしが送れています。

裕福な暮らしの代償として、高レベルに成長したわたしのキャラクターはいまだにリンクシェルを持っていません。もしリンクシェルに属していたらきっとアストラルリングは買えませんでした。サービス開始と同時にスタートした仲間がいたらきっとアストラルリングは買えませんでした。しらばっくれたり、ウソの方便を並べてまでリンクシェルに属したいとは思いません。結果として孤立してしまいました。
スクウェア・エニックスが提唱する"絆"ですが、不正を犯しているわたしに"絆"と呼べるようなものはありません。仕方のないこととして割り切っています。ぎゃくに"絆"を奨励することで不正を抑制しているのではないかと、わたしには思えるくらいです。